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知られざる『江戸時代の浦安』がここに!博物館と市民の連携でつくられた報告書がスゴイ

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市の土地の8割が昭和以降の埋め立てであり、『歴史』というイメージはほとんどなかった浦安。その理由のひとつに、川や海に囲まれた立地のため度重なる水害や高潮・火災にみまわれ、紙の記録が残っていない…ということがありました。ところがこのたび、郷土博物館より『江戸時代の浦安』をテーマにした調査報告書が刊行する、というニュースを聞きつけた筆者。『江戸時代の浦安』はどんな形でどうやって明らかになったのか、作成秘話をお伺いしてきました!

15年前に発見された古文書が、全てのはじまりだった

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学芸員の林さん

2001年、浦安市郷土資料館が博物館として開館準備を進める中で、国文学研究資料館祭魚洞文庫が所蔵している資料の中から「下總行徳領猟師種蠣記録」という堀江村に関する訴訟の記録が発見されました。学芸員として博物館に着任した林さんは、開館準備で慌しい中、「いつかきちんと読み解きたい」とこの記録を写真に収めておきました。

「古文書を読みたい」という市民・山田さんと学芸員・林さんとの出会い

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新浦安に住む山田さん

そうして日は経ち、2008年。古文書を読みたいと来館したのが、新浦安に住む山田さん。もともと歴史が好きだった山田さんは、お仕事を退職された後、数年かけて古文書に使われる「崩し字」を勉強されていました。崩し字がある程度読めるようになった山田さん、地元・浦安の史料が何かあれば…と、博物館に問い合わせたのでした。その申し出に、開館当時に撮影した古文書のことを思い出した林さん。そしてお二人は月に1・2度集まって、1年半かけて古文書の読み合わせ作業を行ったのです。

ひとつの古文書は点。それをひとつずつ結んで面が出来ていく

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下總行徳領猟師種蠣記録 報告書27P

この古文書は180ページにも及ぶ水産・漁業関係の訴訟の記録ですが、全てがつながっているわけではなく、一つ一つが断片的な事件の文書。文字が読めたとしても、その文字が何を意味しているのか、どういう漁法なのか、時代背景や前後関係がわからないと、全体像が見えてきません。そこで、「史料で読み解く浦安ハマの歴史」という講座を開催。江戸時代の漁法についての理解を深めたうえで、講座に参加した方の中からこの古文書を解読する『浦安・古文書読み解き隊』を結成しました。月2回勉強会を開催し、この古文書以外にもたくさんの周辺史料を集め、6年の歳月をかけて徐々に全貌を明らかにしてきました。

昔から浦安に住んでいる方の記憶をもとに、『江戸時代の浦安』の姿が立体的に浮かび上がる

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浦安出身の泉澤さん

史料の読み解きに欠かせなかったのが、古くから浦安に住んでいる方々の“生きた”体験。昭和3年生まれの泉澤さんは、漁師町時代の浦安を知る、貴重な存在です。
「昔はね、大三角線の江川橋、あそこは2人すれ違えるくらいの木の橋だったんです。東京都が浦安に糞尿処理場を作るって視察に来た時があって、みんな反対してね。視察に来た職員の乗ってたトラックを、江川橋から放り投げちゃったんですよ。職員たちは逃げ帰ってしまいました。そうそう、江川橋の堀江側のたもとに去年公園ができたでしょう。あそこは昔は船溜まりで、たくさん船が繋留してあって…思い出の場所です」と、次々面白い話が出てきます!

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現在の江川橋。片側2車線の大きな道路です

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ここに船溜まりがあった

この”江川”というのは塩田用語。なんと今回読み解いた古文書から、江戸の初期は浦安で塩田をやっていたという記録が新たに確認され、「それで”江川橋”なんだ!」と一同盛り上がったそうです。

また、古文書の中に出てくる「しもり船」という言葉。林さんや山田さんは意味がわかりませんでしたが、「船が沈むことを”しもる”という」と地元のメンバーが教えてくださり、「しもり船」という言葉が「沈んでいる船」のことだろう…と推測できたそうです。言葉を追うだけではなく、地元の方の経験や知識を加えることで、当時の生活が立体的になっていく…。

災害に負けない町民性が生んだ町、浦安。その生活をリアルに感じられる報告書です

学芸員である林さんに加え、古文書解読の熱意を持った山田さん、浦安に昔から住んでいる泉澤さんをはじめとした『浦安・古文書読み解き隊』のメンバー24名全員が、力を合わせて出来上がったこの報告書。

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山田さん:「古文書単体ではひとつの事件の点でしかありません。それをいくつも集めて読み解いた、みんなのチームワークが生んだ集大成の報告書です」
泉澤さん:「林さんのリーダーシップのもと、メンバー全員が一生懸命に取り組みました。帰って1枚目から読み直します!」
学芸員・林さん:「良いタイミングがいくつも重なって完成した報告書です。江戸時代の浦安って、貧しい漁村だったという見方が一般的なのですけど、江戸との交易でどんどん発展・成長していった活気あふれる町だった、ということが新たにわかりました。水害や火災など災害は多かったのですが、それに負けない町民性というのかな、そういうものを持った人たちが昔から住んでいるのが浦安なんですね。そういうことを、古くから浦安に住んでいる方はもちろん、新しく浦安に引っ越してきた方や、子どもたちにも知ってほしいです」

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博物館開館15年という節目の年に刊行された「下總行徳領猟師種蠣記録」。前半は古文書の写真と読み下し文、後半は内容の解説をした解題になっています。この解題だけで読めば、古文書に馴染みのない方でも内容がわかる仕様になっておりますのでご安心を。私も読ませていただいたのですが、当時の生活がリアルに感じられて、とても面白かったです。読み解きにあたってどんな話が交わされたかの記録もあるので、クスッと笑える箇所もあって、なんだか自分も解読に参加させてもらったような、贅沢な気持ちになりました。

こちらの報告書、博物館のミュージアムショップにて1冊1500円で販売されています。
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また、浦安市内の図書館をはじめ、市川・船橋など近隣の図書館にも置いてあります(2016/4/9追記)。ぜひ、お手にとってご覧ください。

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