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受け継ぐ一皿、浦安の老舗『羅甸』の‶漆黒の煮汁”が蘇る。ハイアット リージェンシー 東京ベイ「すし絵馬」

北栄4丁目に店を構え、長年浦安で愛され続けてきた老舗料理店「羅甸」(らてん)が、今年2025年3月に惜しまれつつ閉店しました。“真っ黒な煮つけ”で有名となり、その濃厚な味わいの「銀鱈の煮付け」は約40年も愛され続け、話題のグルメドラマにも登場し、多くの方々の記憶に残っています。そして現在、ハイアット リージェンシー 東京ベイの1階レストラン「すし絵馬」のディナーコースの一品として、その味が受け継がれていると聞きつけ、さっそく取材してきました。

「羅甸」の銀鱈煮付け、その味は今も——すし絵馬で受け継がれる伝統の一皿

現在、ハイアット リージェンシー 東京ベイの1階レストラン「すし絵馬」のディナ-コース 【 絵馬 】、【神馬】のコースの中で、「銀鱈の煮付け」が提供されていると教えてくれたのが「すし絵馬」料理長の関口さんです。

なぜその味を残したかったのか――。

「すし絵馬」の料理長 関口さんは市内に30年ほどお住まいで、名店「羅甸」のうわさは昔から知っていたそうです。魚が食べれる料理屋さんとして、何度か足を運んだこともあったそう。そして「すし絵馬」のオープン後、「羅甸」の常連であったホテルオーナーより店終いの話を聞き、「この複雑な味をする煮付けをお店で出したい」と、関口料理長自ら志願したのだそう。

「初めて見た時、ご主人に“炭を入れているの?”と聞いてしまったほど、この真っ黒なタレは何だろう…と思いましたね。どうしてこんなにきれいな漆黒なのか…しかも味は複雑というか、旨味に深みが濃く、単なる継ぎ足しでは出せない、何か秘密がありそうだなと思いました。そうそう出せる味でも、買える味でもありません。このタレは継ぎ足しを重ねて煮詰めて育っていく、まるで生き物ですよ。」と真っ黒の煮付けが入った鍋はこの時も火を入れているということで、実際に厨房へ入らせていただきました。(良い香りが漂い、この香りだけでも白米がいただけそうでした!)

「鍋ごと受け継いだんですよ。魚の煮つけを継ぎ足して煮ることは通常しませんが、このタレは濃厚で少しとろみもあります」と鍋に入った真っ黒な煮付けはきれいな漆黒色。鍋ごと受け継いでいるのにも驚きです。

味の奥行きと深みは、年月の賜物

どうしてこんなにも黒いのでしょうか——

何が入っているのか伺うと、正確なレシピは残されていなかったとのこと。しかし、その味は意外にもシンプル。「羅甸」では、40年以上前から築地市場に足を運び、仕入れから仕込みまでをすべて手作業で行ってきました。調味料の分量は一切記録されておらず、頼りは“勘と経験”のみ——。
「羅甸の銀鱈は、市場で良いものを見つけたときだけ仕入れていたそうです。夜中に築地へ向かい、納得のいく銀鱈を仕入れてから、必ず仕込みを行っていたそうですよ。」
秘伝のタレの詳しい配合は門外不出。分量や材料が違えば、あの深い味わいと漆黒の色は再現できないのだそうです。

まずは特製のタレを鍋ごと温め、そこに銀鱈をそっと入れて、じっくり火を入れていきます。「タレを煮詰めすぎないよう、沸騰させないのがポイントとのこと。魚から出る出汁は何十年という長い間継ぎ足ししてできているので常に“生きている”タレだと関口さんは話します。羅甸の煮付けは、まるで“おでん”のように、長年継ぎ足されたタレに魚の旨みが重なり合い、コクのある味わいが特徴です。煮物に近い感覚で、時間をかけてゆっくり火を入れていきます。こちらではコースの中で提供するので、以前のような定食としてボリュームあるメニューのご用意はありません。6時間はタレに寝かせて鍋に火を入れるだけでも大変ですよね。もちろん衛生管理も大切なので、冷やして、温めて、銀鱈を入れ、継ぎ足しして、味を決めてと、こちらではスモールポーションでの提供となりますが、とても手の込んだ一皿。「この味を受け継ぐ以上は同じ味を保っていかなければいけませんから。受け継ぐ以上はしっかりこの味を伝えていかなければいけない責任があります。」と関口料理長の目には力が入ります。

コース料理の一品として、静かに存在感を放つ

数を多く出すことが難しいことからも、「すし絵馬」では、コース料理の一品として銀鱈の煮付けが提供されています。席数は9席ほどの落ち着いていた上質な空間。ゆったりと時間が流れる中で、「すし絵馬」特製のたまり醤油漬けのにんにくで楽しむ大トロや、うなぎ、唐墨をかけた牡丹海老などを含む握り鮨8貫に加えて、1品としても、お酒のおつまみとしてもお楽しみいただける職人特製の酒肴4種が付いた、「すし絵馬」人気のディナ-コ-スの中で提供されます。9月からは秋の新メニューに切り替わります!

9月提供スタート ディナーコース「絵馬」

職人の想いが詰まった“物語”

和食の前菜や寿司とともに、ゆっくりと味わう煮魚。主張しすぎず、それでいてしっかりと記憶に残る味です。「すし絵馬」ではコース料理との調和を考え、銀鱈の煮付けの下に赤酢シャリを忍ばせています。関口料理長によれば、これは銀鱈の旨味をより引き立てるための工夫なのだそう。実際にいただいてみると、本当に真っ黒な銀鱈——。漆黒の輝きを放ち、身はほろりと崩れ、タレが奥深くまで染み込んでいます。40年ものの旨味が凝縮されたその味わいに、赤酢シャリのさっぱり感が加わり、さらに奥行きのある一皿に。思わずため息がこぼれるほどの、受け継がれた伝統の銀鱈の煮付けは長い年月と職人の想いが詰まった“物語”そのものをいただいているかのよう。受け継ぎ引き継ぐ味をいただけるなんてなんて貴重な体験なのか、今もその味が変わらずここで息づいていることに、心が温まります。

開店当初から変わらぬ味を守り続けた「羅甸」のご主人。その味は多くの人に愛され、閉業が決まると、常連客からの注文が殺到したそうです。長年継ぎ足しながら育てられた秘伝のタレは、お魚が苦手な子どもも虜にするほど。老若男女の“想い出の味”として記憶に刻まれています。このタレは、毎日火入れをしてじっくり煮込み、育ててきたまさに“生きている”味。ご主人は、関口さんのもとでその味が受け継がれることについて、「この味がなくならずに受け継がれていくのは、本当に嬉しいことです。」と話しているそうです。

再現を試みた当初、提供することにかなり不安もあったそうですが、「羅甸」の味をいただけると聞いてお客様も訪れているとか。もちろん初めて召し上がる方もいらっしゃていますが、初めて召し上がるお客様も含めて、皆一様に驚きと、この味わい深い味を楽しんでくれることに、「受け継いでよかったなって思える瞬間です」と話してくれました。

「羅甸」の閉店はひとつの時代の終わりでしたが、その味は“すし絵馬”で静かに生き続けています。40年受け継がれてきた銀鱈の煮付け。それは、単なる一皿ではなく、家族とお店、そして街の記憶を繋ぐ“物語”そのものです。「羅甸の味、もう一度食べたかった」そんな方は、ぜひ一度、“すし絵馬”を訪れてその深い味わいをいただいてみてはいかがでしょうか。

ハイアット リージェンシー 東京ベイ
住所:浦安市明海 5-8-23
TEL:047-305-1234
公式HP https://hyattregencytokyobay.jp/top/
すし絵馬 https://hyattregencytokyobay.jp/top/restaurant/sushi-ema.html
【 絵馬 】、【神馬】のディナ-コースは金土日祝のみの提供

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