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浦安ってこんな街!

もしあなたに大好きなお店があるなら、ぜひ足を運んでおこう、という話。

続々と新しい店舗がオープンする浦安エリア。新しいお店ができると、「どんなお店なのかな?」「どんな美味しいものが食べられるのかな?」ってワクワクしますよね! でも…新しいお店が出来るということは、閉まるお店もあるということ。特にこのコロナ禍では、暖簾を仕舞ったお店も多いんです。この7月でお店を閉める決断をした、北栄「天ぷら 天悟」店主の宇田川さんに、お話を伺ってきました。

数ある飲食店の中でも、特に個性の際立つお店「天悟」

「天ぷら 天悟」といえば、浦安で唯一の天ぷら専門店。2011年にオープンし、本格的な天ぷらを良心的な価格で味わえるお店として、12年にわたり営業を続けて来られました。都内の老舗天ぷら天で修業を積んだ店主の揚げる天ぷらは、素材の旨さを極限まで引き出した一品。「天ぷらは究極の蒸し料理」とおっしゃる宇田川さんは、旬の野菜や魚介・肉以外にも「果物」や「スイーツ」なども絶品天ぷらに仕立ててしまうんです! まだ見ぬ世界が開けるとはこのことで、本当に何度も驚かされました…。(※過去記事は掲載当時のものです。メニュー、価格など変更になっておりますのでご参考までに)

天ぷらを“揚げる”ことに留まらず、食材のふるさとである海や川にも造詣の深い宇田川さん。日本の“食”を取り巻く現状について、お話を聞くととっても面白い! 「浦安にも美味しい天ぷらになる食材があるんだよ」と、一緒に旧江戸川へ釣りに行ったり、境川でハゼ釣りを教えていただいたり。

「命をいただくなら余すことなく、美味しく食べてほしい」と、魚のさばき方教室を開催されたこともあります。

…と、これまでにも何度も取材させていただき、とってもお世話になりました。

カウンターで揚げたて絶品天ぷらを味わいながら、大将といろんな話に花を咲かせるのが醍醐味の「天悟」さん。対面で会話するのが楽しいお店だけに、コロナ禍の痛手は大きかったに違いありません。コロナが落ち着いたら行こう…と思っているうちに閉店の知らせを聞き、「まさか」と思っていらっしゃる方も多いのではないでしょうか。

このままでは、外食という文化が無くなる!?

「コロナが五類になって、世間では終わった感じになってますけど…やっぱりなかなかお客様は戻っていないのが現状です」と宇田川さん。「また行くね」が「今度」になり、それが「いつか」になる…それと同じような思考はなんとなく、身に覚えがあります。「みんなが『いつか』になってしまったら、お店にお客さんは来なくなる。そうしたらお店はやむなく閉店するしかないんです」

「お店を閉める」とSNSで発表してからというもの、電話が鳴りやまないという天悟さん。「それが答えですよね。私たちだけじゃない。世の中は元通り動き出したかもしれないけど、コロナ禍で打撃を受けた飲食店は、元通りになんかなっていない。浦安でも銀座でも、どんどん飲食店がなくなっています。特に個人店はその傾向が顕著です。このままだと、外食という文化が無くなってしまうんじゃないか、と危惧しています」

飲食店の力って何だろう

人は、お腹がすいたら食事をします。いつ・何を・誰と・どこで食べるかによって、気分も全然違いますよね。

飲食店での食事に求めるものは何でしょうか。例えばファストフード店なら「サクッと」「手軽に」「安く」食べたい、カフェなら「コーヒーの香りに包まれて」「ゆったり」したい、居酒屋なら「みんなで」「ワイワイしながら」「お酒を」飲みたい…等々。もちろん、個々のお店によっても、訪れる人によっても求めるものは違ってくるでしょう。

2020年2月の写真

「天ぷら 天悟」は、美味しい天ぷらを食べるだけじゃない、「コミュニケーションを取る場」として機能していました。「カウンターで揚げたて天ぷらを食べるっていうのは、一回席についたら1時間か1時間半くらいはかかります。食に興味があっていろいろ知りたいというお客様には学校、疲れ切っているお客様にはヒーリングルーム、話を聞いてほしいというお客様にはカウンセリングルーム…といった具合に、天ぷらを揚げながらお客様とコミュニケーションを取るのが当店のスタイルでした」

2022年12月の写真

「今みんなネットの口コミを見て行くお店を選ぶけど、それって『失敗したくない』っていう思いが根底にあるんじゃないかな。実際自分で足を運んでみないと、伝わらないものも多いと思う。飲食店で提供する料理って、食べ物のことだけじゃない。お店に入ってから出るまでの、空間や会話、待つ時間も全てが『料理』だと思っています。そういう意味でも、飲食店をもっと楽しんでほしい」

推しは推せるうちに推せ!

「お店の人たちは、閉めると発表するまでそんな空気は出さない。『大変だ』とも言わない、あるいは言えない。ある日突然『閉めます』と発表するんです」と宇田川さん。「発表を聞いてお客さんが慌てても、もう遅い。閉店を発表してから来てくれるのも、もちろん嬉しいんだけど、『寂しいです』って言われて…一番寂しくて悔しいのはお店自身なんです。お店の人たちは『もうちょっと早く来てくれれば…』って思ってる」

一番悔しいのはお店自身。この言葉、どこかで聞いたことがあると思ったら、2019年の浦安魚市場閉場を追ったドキュメンタリー映画「浦安魚市場のこと」でした(過去記事はこちら)。魚市場が浦安からなくなるという衝撃的なニュースは、かつて漁師町だった浦安の歴史の中で、大きな節目となりました。閉場の発表のあと「魚市場をやめないでほしい」「寂しい」という声がたくさん届くのですが、「それなら、もっとたくさん魚市場に来てほしかった」という魚屋さんの言葉…お客さんが来ないから、お店がなくなる。本当に、その通りだと思います。

2015年の浦安魚市場の様子

だからこそ、大好きなお店にはぜひ足を運んでほしい、と宇田川さんは話します。「今、物価高で生活必需品の値段が上がって、皆さんも苦しい思いをしていることは重々承知です。でも、もし大好きなお店があるなら、ずっとそこにあってほしいお店があるなら、ぜひ足を運んでほしい。何度も通ってほしい。『推しは推せるうちに推せ』という言葉がありますが、まさにそれです」。一人ひとりの力は、もちろん小さい。自分が1回お店に行ったからって、何も変わらない…と思うかもしれません。でも、そんな一人ひとりの行動が集まることで、大きなうねりが生まれます。「世の中」や「世間の空気」というのは、私たち一人ひとりが作っているということを、改めて意識したいと思いました。

「天悟」のこれから

「天ぷら 天悟」は、7月9日に浦安での12年の営業に終止符を打ちました。大将の宇田川さんは、今年天ぷら職人として30年目の節目でもあるとのこと。今回の閉店を機に「これからは食べ手のプロを育てていきたい」と話します。「天ぷら職人なので、美味しい天ぷらを揚げるのは当然。これからはお客さんの味覚や、良質なアンテナを育てたいと思っています。今はいろんなところに情報が溢れていて、取捨選択するのが難しい。偽物の情報も、たくさんありますから」

…そう、実は宇田川さんの地元である葛西で「天ぷら専門店」として再出店の計画があるそうです! オープンは8月下旬ごろを予定、InstagramFacebookTwitterのアカウントはそのまま発信を続けるとのこと。ぜひ次のお知らせを楽しみにしていてくださいね♪

天ぷら 天悟…7月9日で閉店いたしました。
※最新情報はInstagramFacebookTwitterにてご確認ください。

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