浦安ってこんな街!
8.292015
軍艦島の廃墟郡にみる「マンションの寿命」とは? 【後編】
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軍艦島の廃墟郡にみる「マンションの寿命」とは? 【前編】では「マンションの寿命」を軍艦島の廃墟郡から考察しました。
マンションが「朽ちる」「朽ちない」の分岐点は「人が維持・管理しなくなる」点にあるという結論をみました。
そこで浮かんだ次なる疑問として、「人が維持・管理しなくなる建築」ってどういうものなんでしょうか。
そして、存続可能なマンションの簡単な見分け方までお届けしたいと思います。
軍艦島より5年も古い「三井物産横浜ビル」はいまだに現役を続けています。
軍艦島の30号棟は、現存するものの、現在到底人が使えるレベルを超えてしまっています。
この差はメンテナンスにあるはずです。
三井物産横浜ビルは現在はその名を「KN日本大通ビル」と名を変えてはいますが、いまだに多くの入居者を抱え続けています。
建物内外のメンテナンスを継続しているからこそ、現在に至っているのでしょう。
一方、軍艦島30号棟は最後の島民が島を去った1974年4月20日を最後に、まったく人の手が加わっていない状態です。
40年以上何の手もくわえられないまま、放置されています。
軍艦島はなぜ見捨てられてしまったのでしょうか。
ここで軍艦島の歴史を少し整理したいと思います。
軍艦島が見捨てられたのは大きな時代変革によるものでした。
1810年ごろに石炭が発見され、当時は江戸時代だったのでこの地を治める佐賀藩が小規模な採炭を行っていました。
1890年、明治時代に三菱合資会社の経営となり、炭鉱として本格的に開発が進められました。
そこからは「富国強兵」の号令の下に急速な産業の西洋化を遂げていった時代から第2次世界大戦までの激動の世に突入します。
国力ともいえる、産業を支えるエネルギーは主に石炭が担っていました。
当然、石炭の需要はうなぎのぼりの時代です。
軍艦島における採炭量が増加するに比例し、人口も増加の一途をたどりました。
1959年のピーク時約5300人もの人が住んでいましたが、その人口密度は実に東京の9倍に至りました。
繁栄を極めた軍艦島の状況は以後一変します。
時代は1962年の原油輸入自由化を代表する1960年代の「第二次エネルギー革命」を迎えます。
石炭の需要は一気に減少し、それとともに軍艦島における採炭量も人口も急速に減少することになります。
1963年には一年間で約1700人(当時の島民のうち約35%)が離島しました。
70年近くかけて開発が進められた軍艦島は原油輸入自由化から起算して、なんと12年で閉山を迎えることになりました。
地域の歴史があるから島の施設が維持されるわけではなく、経済的な要因で変化は起きました。
こんなに一気に変化が起きたのは「軍艦島」のすべてが三菱の単独所有だったことがあると思います。
例えば区分所有で個人が不動産を所有していたとすればこのような急激な離島はなかったのだと思います。
ただ、お隣の高島のように、人口の先細りは避けられなかったのだと思います。
軍艦島の事例から鑑みるに、建物の維持・管理のためには人による需要は必須となります。
軍艦島は時代背景の移ろいの下、急速に人による需要が失われてしまいました。
結果その地にあった建物は遺棄されてしまいます。
時代背景を鑑みるに非常に高価で貴重なものだったのにも係わらずです。
長崎には同じように時代の変化により消失した「街」が他にもありました。
「出島」です。
唯一無二の非常に貴重な街だったのにもかかわらず、開国後一気に町が周辺の開発に飲まれ、1904年に姿を消してしまいました。
軍艦島や出島におきたものと同じようなことがマンション個別においてもいえるのではないでしょうか。
「人が維持・管理を続けることが出来なくなってしまうマンション」の過程を整理すると3段階になると思います。
その1:マンションの空室率の増加
時代に求められ、需要が絶えないマンションは入居者も切れません。
逆にそうではないマンションは、どんどん空室が増えることになります。
相続発生時に貰い手がいない不動産も地方では増えています。
空室があることそれ自体は問題ではないのですが、一番の問題は空室の増加や長期化が招く、管理組合の担い手としての当事者意識の低下です。
自分が住んでいなかったり、誰にも貸していなかった場合、どうしても建物環境維持における当事者意識が薄れてしまいます。
管理組合からの呼びかけにも応じない人が増えると、どんどん管理組合としての機能が不能になっていきます。
その2:管理組合の組織力の低下
多くのマンションが管理組合を組織し、計画的に建物の維持管理に努め、良好な住環境を維持しています。
しかし、上記の通り空室率が増加し、管理組合の担い手としての当事者意識が全体的に低下してしまうと、その組織力がどんどん低下してしまいます。
組織力の低下が止まらず、何らかの原因で管理組合が消滅してしまった場合、建物の維持が無秩序になってしまいます。
そして、修繕金の集金が不能になり、ひいては修繕計画の破綻に繋がってしまいます。
その3:廃墟化
修繕計画もままならず、放置が続き、主体となって修繕計画を立て直そうとする管理組合も存在しなければ、マンションは加速度的に荒廃します。
荒廃→入居希望者は途絶える→更なる荒廃といったようにどんどんマンションは廃墟化の一途をたどります。
その成れの果てが軍艦島です。
賃貸・分譲問わず、そのマンションや地域に今後「住みたい!」という人がどれだけいるか、が今後のマンションの存続の可否に直結します。
そして、「マンションの保全について意識の高い住民」がどれだけ多くいるか、ということも同様に重要です。
建物の今後の存続可能性はマンションの購入時には非常に気になる点だと思います。
そのマンションの「管理組合の組織力」や「保全についての意識力」を推し測る簡単なバロメーターがあります。
「修繕計画に基づく積立金総額」と「マンション全体の修繕金の滞納額」です。
マンションを賃貸するときは、この説明はほとんどの場合受けませんが、購入の場合は必ず説明を受けることになります。
つまり、購入時の説明を受ける不動産屋さんは必ずこの2点は把握しているものです。
修繕金の総額や滞納額は売買契約の前段階で必ず「重要事項説明書」において説明することになっています。
上記に点は不動産屋さんが事前に入手する管理会社発行の「マンション管理に係る重要事項調査報告書」に記載がある場合がほとんどです。
一部マンションは記載されていない場合もありますが、その他の何らかの資料で確認ができることがほとんどです。
大体どのマンションにおいても若干の滞納額があるものですが、問題はその多寡に注目すべきです。
あまりに多くの滞納額があるようであれば、修繕計画の破綻を疑うべきです。
まったく滞納がないという、すごく意識の高いマンションもあります。
お住まい探しの際は、是非この点について注目してもらえれば、少しだけそのマンションの未来が垣間見られるかもしれません。
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