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【助産師なんでも相談室vol.2】子どもへの“性教育”、必要だってわかっちゃいるけどどうしたらいい…? まずは親が丁寧に言葉にする、子どもに言語化させる、言いたいことを言い合える信頼関係を作ること!【幼児編】

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3歳と7歳の子どもがいる我が家。最近取り組まねばとひしひし感じているのが…そう、『性教育』です。性教育って下ネタ系の話?というイメージをお持ちの方もいらっしゃるかもしれませんが、実は性教育とは人権教育の一部。今回の【助産師なんでも相談室】では、浦安助産師会の皆さんに性教育の大切さや親の姿勢についてお話を伺いました。一口に性教育と言っても年代によって伝え方は異なるため、今回は0歳~未就学児ごろまでの【幼児編】をお送りします。本当に目からウロコなことばかりで、めっちゃくちゃタメになりました!!

そもそも“性教育”って何?

「『性』という漢字は、忄(りっしんべん=心)に生、つまり『心が生きる』と書きます。つまり、私たちの生き方を表しているんです」と話すのは、佐野産婦人科で助産師を勤めている増田さん。性教育とは心が生きる教育、つまり『自分らしく生きるという生き方』そのものの教育なんですね。

とはいえ、数々の教育が整備されてきた現代においても、性に関わる部分は抜け落ちてしまっているという現状があります。「自分の体の中でも、たとえば歯のことは幼稚園や保育園などでも『生きるのにとても大切』『しっかり磨きましょう』と指導がありますが、性器について触れられることはほとんどありません。排泄も生殖も、命にかかわる大切な部分なんですが…。日本では今の大人が性教育を受けてきていないので抵抗が強く、なかなか進んでいないという現状があります」。そう、性に関することはタブー視されていて、どうしてもオープンに語れない雰囲気がありますよね…。

幼児期から年齢に応じて性教育に取り組んでいる海外では、日本に比べ若年層の望まない妊娠や性暴力・性被害なども少ないのだそう。正しい知識を得ることで、自分や大切な人を守ることができます。「人が人として幸せに生きるための知識を得ることはもちろんですが、幼児期には『全ての人が幸福に生きる権利を持っている』という人権の部分、つまり『あなたが大事』ということを伝え続けていくことが大切です」

性教育の基本は、信頼関係。思っていることをしっかり伝える、子どもの言葉を受け止める

性教育は、実は生まれたときから始まっています。オムツを替えておしりを拭いたり、泣いたら抱っこをしたり…「子どもの要求に応えていくこと=信頼関係の確立。信頼関係は性教育の基本なんです」と増田さん。「断ったら嫌われちゃうかな…」「本当はイヤだけど怒られないように…」と相手の気持ちを忖度するのではなく、相手から求められても自分がイヤなことはイヤと言える、それが本当の信頼関係。まずは親子でしっかりと信頼関係の土台を築いておくことが大切です。

親の伝えたいことは、ポジティブかつ丁寧に、根気よく

子どもが「うんち」「ちんちん」と連呼して困る…そんな経験はありませんか。ついつい「そんなこと言わないの!」と声を荒げてしまいますよね。でもそこでただ否定するのではなく、まずは「性への関心を持ち始めるほど成長したんだ」と認めてあげる。そこから「あなたはその言葉を言うと楽しいんだね。でも私はイヤな気持ちだな。周りの人はどうかな?」と投げかけてみる。一回では効き目はないかもしれませんが、根気よく何度も伝え続えるのが◎!

性器を触っているところを見かけたときは、「汚いから触らない!」と言ってしまいがち…ですが、できるだけ「汚い」「恥ずかしい」「いやらしい」などネガティブな言葉は使わないほうが良いのだそう。「触るときは、キレイな手でね。大事なところだから、人前では触らないように」というように、なるべくポジティブな言葉を選び、なぜいけないのか丁寧に伝えていくことが大切です。

子どもの気持ちを受け止め、言語化させる

「着替えたくない!」「食べたくない!」「歯磨きしない!」などなど、親の言うことを聞いてくれないことも多々ありますよね。ついついこちらもヒートアップして、「早くやりなさい!」「わがまま言わない!」と強く押さえつけようとしてしまいますが、まずは深呼吸。「着替えたくないんだね。どうしてイヤなの?」と、聞いてみてください。まだまだ気持ちを言語化するのに慣れていない子どもたち、最初は難しいかもしれませんが、イヤなときはイヤと言える環境を整えていくことで、言いたいことを言える=信頼関係を深めることができます。また、小さい時から自分の気持ちを言語化する訓練をすることで、友人関係や学校などで嫌なことがあったときに、すぐに手が出たりキレたり…といったトラブルを減らすことができます。将来の子どものコミュニケーション能力を育むことにもつながります。

自分のからだは、自分のもの!

当たり前のことですが、自分のからだは自分のもの。小さなころから子どもがそう思えるように、親ができることはたくさんあります。たとえばオムツを替えるときやお風呂で体を洗ってあげるとき、何も言わずに触るのではなく「触るね」「拭くね」と声をかけてあげる。特に水着で隠れる場所(プライベートゾーン)は、親であっても勝手に触らない。そして「水着で隠れるところは大事だから、誰でも勝手に触っちゃいけないんだよ」と繰り返し伝えていくことが大切です。将来的に、性的同意を取ることにもつながります。

ちなみに幼児期の性被害は、男の子と女の子で性差はないのだそう。男の子も他人事ではないので、きっちり伝えていきましょう。

私はどこから生まれたの?

究極の質問「赤ちゃんはどうやって生まれるの?」「私はどこから生まれたの?」。聞かれて困った経験のある親御さん、子どものころ親に聞いて困らせたという方も多いのではないでしょうか。ちなみに昭和50年代生まれの筆者も小学生のころ、親戚一同が集まる場でこの究極の質問を発し、場を凍らせた記憶があります…苦笑。

「一人の人間として、自分がどこから来たのか知りたいと思うのは自然なこと。ぜひご自身の言葉で伝えてあげてください」と、Tomoru助産院院長の北島さん。小学校1・2年生向けの性教育では、「お母さんが卵(卵子)を持っていて、お父さんが設計図(精子)を持っていて、どっちもたっくさんあるんだけど、その中で一番同士が出会ってあなたが生まれた。何兆分の奇跡で生まれた一番同士の命だから、みんな特別だよ!」と伝えていると言います。「小学校に入るとテストやかけっこで順位が決まるでしょう。でもあなたたちは一番同士の命なんだよって教えてあげると、子どもたちみんな感激するんです。この世にいるだけですごいことなんだ!ということを伝えたいですね」

一番やってほしくないのが、子どもの質問に対して「そんなこと聞くもんじゃありません!」と質問自体を否定してしまうこと。「聞いちゃいけないんだ…」と子どもが萎縮してしまうだけでなく、性に関する質問に親が答えてくれない経験が積み重なっていくと、ついに親には相談しなくなってしまいます。もしその場ですぐ答えられなかったら、「疑問なんだね。そしたら一緒に調べてみようか」と、まず子どもの気持ちを受け止めて、あとから調べておくのでもOK。自分でうまく伝えられる自信がなければ、絵本を一緒に見るのもオススメです。

助産師さんオススメ!性教育の絵本

■子どもと一緒に読んでみよう!

からだっていいな』山本直英・片山健 童心社
…自分の体が大事に思えること、それが「生」にとって必要なこと。次にいのちをつないでいくプライベートパーツも大事にしていくことにつながります。 

いのちのまつり みらいへ』草場一壽・平安座資尚 サンマーク出版
…はるか昔から紡がれてきた“いのち”を精いっぱい生きて、次の世代へつないでいくことの大切さが描かれています。

おちんちんのえほん』山本直英・佐藤真紀子 ポプラ社
…男の子や女の子の体の仕組みやいのちの誕生、性被害についてもわかりやすく描かれています。

おかあさんとみる性のほんシリーズ『ぼくのはなし』『わたしのはなし』『ふたりのはなし』山本直英・和歌山静子 童心社

ぼくどこからきたの?』ピーター・メイル 訳:谷川俊太郎 河出書房新社
せっくすのえほん』みずのつきこ 子どもの未来社
…男女が「いのちのもと」をもっていることや、セックス・いのちの誕生について描かれています。

とにかくさけんでにげるんだ』ベティー ボガホールド (著)、河原 まり子 (イラスト)、安藤 由紀 (翻訳) 岩崎書店
…誘拐や性被害にあったときに、どうしたらいいか親子で話しあえる絵本です。性被害は先生や近所の人、家族が信頼している人や親戚から受ける場合もあります。そんな場合も描かれています。

あっ!そうなんだ性と生』浅井春夫・北山ひと美他 エイデル研究所
…後半に大人向けの解説があり、子どもも大人も学べる一冊です。からだ、命、性被害、ジェンダーについて幅広く書かれています。

■2020年以降に発行された性教育に関する本(幼児向け、大人が参考にするものも含む)

コウノトリがはこんだんじゃないよ』ロビー・H・ハリス 訳:上田勢子 子どもの未来社
いま、子どもに伝えたい性のQ&A』アクロストン 主婦の友社
親子で話そう!性教育』浅井春夫・良香織 朝日新聞出版
おうち性教育はじめます』フクチマミ・村瀬幸浩 株式会社KADOKAWA
性のおはなしQ&A 幼児・学童に伝えたい30のこと』浅井春夫 エイデル出版
あっ!そうなんだ!わたしのからだ 幼児に語る性と生』中野久恵・星野恵 エイデル出版

筆者もこの中から2冊買いました。最初に買ったのが『おうち性教育はじめます』で、こちらは親向け。マンガ形式でさらっと読めるので、性教育の取っ掛かりとしてちょうど良さそう。次に買ったのが『あっ!そうなんだ性と生』、こちらは子どもと一緒に読める内容。まだ我が家では子どもたちに見せられていないのですが、性に関する質問が飛び出したらサッと出すつもりです。ドキドキ…!

終わりに…

浦安助産師会の皆さん

「命や性の仕組み、知識を伝えていくことは確かに大切。でもそれ以上に、お家では『あなたが大切』『あなたが生まれてきてくれて幸せ』ということを、たくさん伝えてほしい。これはお家でしかできない性教育なんです」と、すず助産院の來田さん。小難しく考えず、まずは「大好き!」をたくさん注いであげること、それならすぐに出来そうな気がします…! 助産師会の皆さん、ありがとうございました!

次回のテーマは『性教育~思春期編~』をお届け予定。

たくさんの親子、たくさんの赤ちゃん、たくさんの家族を見てきた助産師さん。だからこそ、「これはママやパパに知っておいて欲しい」「ここに気をつけてほしい」と思うことがあります。連載企画【助産師なんでも相談室】では、子育てや性にまつわる「これどうしよう…」を、助産師さんと一緒に考え、解決の糸口を探ります。

次回は『性教育~思春期編~』を予定。家以上に交友関係が広がり、子によってはネットなども簡単にアクセスできる思春期時代、お家で何をどこまで教える? 親としての心構えは? こちらもぜひご期待ください!

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