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嘘や偽りのない世界…裏表のない彼らだから作る優しい作品に心を救われる。3年目の「纏う」展覧会が開催されます。【浦安市】

浦安で活動する花咲く書道家 永田紗戀さんと、社会福祉法人なゆたの利用者MUSUHIの皆さんがコラボレーションして作られた作品「纏う(まとう)Matou」。昨年は浦安市のふるさと納税返礼品にも認定され、大きな飛躍の年となりました。そんな「纏う」の展覧会が、今年は10月12日(土)13日(日)の二日間で開催されます。今年で3年目となる「纏う」…どんな展覧会となるのか、取材をしてきました。

裏表のない彼らだから作れた。無自覚なアーティストたちの作る“あいまいな世界”に心を救われて…

なゆたさんに行くと、MUSUHIのみなさんが作品づくりの真っ最中。もくもくと作品に向き合う姿は、去年よりもさらに力強く、作品に取り組む真剣みを感じます。

「纏う」とは紗戀さんの描いた書に、なゆたさんを利用するMUSUHIのみなさんが刺繍を施した作品。色とりどりの刺繍糸の中から自分で糸を選び、作品を紡いでいきます。その絶妙な色使いが新鮮で美しくて、一つとして同じものがない作品に“特別感”を感じずにはいられなくなります。

「纏う」の魅力は表面にとどまらず、裏側もぜひ見てほしいところ。裏側もキレイに几帳面に紡がれた作品もあれば、まるで花が咲き誇っているようにダイナミックに仕上がった作品もあります。

裏面の芸術性に心惹かれる方も多いそうで…「例えばこの作品。この作者は力が強くて、どうしても作業工程の中で台紙を折ってしまうんだけど、出来上がる作品はすごく素敵で。ぜひ見てほしいと思ったから去年の展覧会で展示をしていたんです。そしたら『この作品は購入できないの?』と聞かれることが多く。今年は購入できる形にしてみました」と紗戀さん。

すごい素敵!表から裏へ、裏から表へと色とりどりの糸が幾重にも紡がれていて、台紙を飛び出す姿は植物がのびのびと成長しているようにも感じます。「エネルギッシュで元気が出ますね!」と話すと「素敵って言ってくれてるよ」と作者に声をかける紗戀さん。こちらを振り返らずもくもくと作業をしていますが、その表情はにっこりと笑っていて嬉しそうでした。

「今年は、一人ひとりの技術の上達も感じられました。だからこそ、3年やってきたから分かった彼らの世界をもっと表現できないかと思って、今回は前回までと違う、よりアート性のある作品を手掛けることにしました」。今までは言葉に糸を紡がれた作品でしたが、今年は抽象的な作品が並びます。

「ふと、そういえば書を書いているところ見せたことないなと思って。見てもらうことにしたんですよね。何を書こうかな…と考えて、みんなの前でなんとなく、“こころの中を描いてみます”って筆を動かしたんです。そしたら、踊りだす子や一緒に描く真似をする子がでてきて、大盛り上がり!このハートの中には何を描こう?と聞くと、いろんなアイディアが出てきました。『されんさん(利用者さんはみんな“されんさん”って呼ぶんです)も嬉しかったり悲しかったり、いろんな気持ちがいったりきたりするんですよ』なんてことも話しながら描いていたんですけど、それを聞いていたからなのか…そうではなかったとしても、彼らが思う“作品の世界”を伝えてくれて。これが彼らの世界なんだなと思いました」

そんな風に描かれた作品「彼らは無自覚なアーティスト」は今回のポスターイメージにもなっています。「書をライブで描き、そこから生まれる彼らのインスピレーションを作品に映し出す。彼らにしか生み出せない、彼らだから生み出せたこの“あいまいな世界”はとっても新鮮で、3年間続けてきたからこそ出来た賜物なんじゃないかなって思います」

墨の黒が描くのは、長く続く暗いトンネルや、ひんやりとした森の中のような、どこか暗がりを感じるイメージのもの。そんな墨の中に、ぽっと明かりが差し込むように紡がれた糸。やわらかくて温かくて、心の中にあった嫌な部分やもやもやを、そっと包み込んでくれるような優しさを感じました。
「嘘や偽りがなくて、彼らは本当に素直なんです。裏表がないから、直球でダイレクトに気持ちを伝えてくれる。そんな彼らだから作れる世界、作品だと思うんです。20年間、書道家としてやってきた私ですが、今までこういった作品は描いたことがなくて。私じゃ作れないし、私がもし自分の作品として出すってなったらズルいって思う。だから出さないし、作れない。MUSUHIの皆だから作れた作品です」

誰が欠けてもダメだったんだと思う。人という糸が紡いできた“3年目の纏う”とは。

そんな彼らを側でサポートしながら、二人三脚で「纏う」に携わるのがなゆたのスタッフのみなさん。「彼らの存在も、纏うには欠かせない」と紗戀さんは言います。「MUSUHIの彼らが糸を通す穴は、なゆたのスタッフさんが一つずつ丁寧にピンであけてくれています。その工程がなければ『纏う』は作れません」

「今回初めて、スタッフさんに色んな話を聞きました。前職の話、なぜこの仕事についたのかなど…。その子のルールや性格を理解して寄り添う。話を聞けば聞くほど、ここは優しい場所だなと思いました」

今回は、そんなスタッフさんの温かさを表現した「LOVE」や「感謝」など、温かな言葉の作品も多く並びます。紗戀さんと、なゆたのスタッフさん、MUSUHIのみなさん。書と、言葉の持つ力と、紡がれる糸が合わさって出来た温かくて優しい作品…「MUSUHI」の世界が今までよりももっと深く表現されているような気がしました。

「『纏う』を始めるとき、3年は続けようと決めていました」。紗戀さんと、なゆたの施設長 佐藤さんがこの3年間を振り返ります。

(紗戀さん)「『何にもならなくても、3年は展覧会をやろう!』そう思って始めた纏う。当初の目標よりも、はるかに上、想像以上の作品になっていて日々驚いています。これからも一緒にできることはやっていきたい。実は来年、私の個展を都内で開く予定なのですが、そこに『纏う作品』も展示する予定です。目標だった3回目の展覧会、彼らの、無自覚なアーティストたちの作る世界を、ぜひ感じてほしいです」

(佐藤さん)「『纏う』という表現が、MUSUHIの皆にとっても私たちにとっても、どんどん大切なものになっているように感じます。はじめは作業だったことが、仕事になり、彼ら自身も作品への想い入れが増していくようになりました。『この作品は私がやる!』と断として譲らない姿を見せたり、今まで積極的に手をあげることのなかった子が『やってみたい』と静かに手をあげたり…。それぞれがそれぞれのペースで、作品への想いを募らせているんだなと実感しました。続ければ続けるほどに世界の広がる『纏う』。これからもずっと続いてほしいですし、その世界の広がり方に私自身もワクワクもしています」

1年目は小さなポストカードから、2年目は大きな作品に、そして3年目の今年はよりアート性を感じさせてくれる作品へ…年を追うごとに作品の魅力がどんどん膨らむ「纏う」。
無自覚なアーティストたちの作る、あいまいで、そして優しい世界を、ぜひ会場で体験してみて。

■「纏う」展覧会 詳細と会場について

開催日2024年10月12日(土)13:00~17:00/13日(日)11:00~17:00
会場なゆたカフェ 浦安市堀江6-4-36
入場料無料
お問い合わせ一般社団法人 花咲く書道
047-351-7720

※当日は作品の購入が可能です(クレジットカード対応)

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