浦安ってこんな街!
5.242022
【浦安の老舗】船の仕事から行商、そして海苔屋へ。浦安の変遷を見守ってきた『市船(いちふね)海苔店』を取材しました
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かつて漁師町として栄えた浦安では、人々の生活は海や船と共にありました。時は流れ、漁業権放棄・海面の埋め立てを経て、すっかり都市化した浦安。ですが、東西線浦安駅周辺エリアには、漁師町だった浦安の面影を現在に伝えるお店がそこここにあります。堀江4丁目、宮前通りにお店を構える『市船海苔店(いちふねのりてん)』さんも、その一つ。
長らく浦安魚市場で営業していた『市船海苔店』さん。2019年3月に魚市場が閉場した後、翌月には堀江の宮前通りへ移転され、海苔やお茶・乾物などを販売されています。『市船』4代目、『市船海苔店』2代目の山﨑美智恵さんにお話を伺ってきました。
船の仕事から行商、そして海苔問屋へ
もともとは堀江に家があり、『六郎兵衛(ろくろべえ)』という屋号だった金子家。『市船』さんの始まりは約100年前、山﨑さんの曽祖父にあたる金子市太郎さんが猫実で船の仕事を始め、屋号を『市船』に定めます。「浦安の海苔漁師さんたちから海苔を預かり、当時日本橋にあった市場まで海苔屋さんに卸しに行っていました。新潟や信州から出稼ぎに来ていた人たちにも任せて、何隻も船を使ってかなり手広くやっていたようです。船は同じ猫実に住んでいた船大工・かんべさんに船を作ってもらっていたらしいですよ」。なんと!かんべさんといえば、現在北栄にお店を構える自転車屋さん。以前取材させていただいたときに、お祖父さんが船大工だったという話を聞いていました。こんなところで繋がるとは…!(かんべさん過去記事はこちら)
戦後になってからは、魚や海苔などの行商をはじめた『市船』さん。「父は終戦の年の10月に軍隊へ入隊する予定だったんです。それが8月で戦争が終わったから、学校に戻って勉強することもできたんだけど、すぐに川留さん(※浦安魚市場にも出店していました)のおじいさんと一緒に行商へ出て。それからずっと仕事をしていました。そのときのご縁で、魚市場ができるときに声をかけてもらったみたいですよ」。浦安魚市場が浦安橋のたもと(現在の浦安サンホテルの場所)へ開業することが決まったときに、商いを海苔に絞り『市船海苔店』として出店します。
その後、魚市場は北栄へ移転。市船海苔店さんでは、スーパーが増える前は『板海苔』の販売が主流だったのだそう。「今一般的に売っている焼き海苔は、板海苔に火入れをして、さらに焼き加工をしたもの。板海苔は自分で焼く必要があるんです。今でも、板海苔を買って自分で焼いて食べるのが好き!これじゃないとダメ!とおっしゃる方もいらっしゃいますね」
今年のおススメは『青飛び』!
2019年に魚市場の閉場した後すぐ、堀江4丁目の宮前通り沿いへお店を移転。猫実の庚申通りにも市船さんの店舗がありますが、現在は倉庫として使用しているそうです。「魚市場がなくなるときに、猫実へ移転することも考えたのですが、ちょっと場所が説明しづらいかな…と思って。宮前通り沿いのこちらへ移って正解でした」と山﨑さん。訪れるのはご近所の方をはじめ、行徳・葛西などから足を運ぶ方、市場時代からのお客様は都内や茨城など遠方からやってくる方も多いのだそう。「市場のときは、お寿司屋さんなどお店への卸もたくさんありましたけど、コロナで辞めちゃったところも多いです。今は小売が中心ですね」
イチオシをお伺いすると、「今年は『青飛び』が美味しい!」と教えてくれました。『青飛び』は、青海苔が混ざった海苔のこと。同じく青海苔が混ざる海苔には『青混ぜ』がありますが、青海苔の含有量が『青飛び』より『青混ぜ』のほうが多いのだそう。「千葉の金田で採れた『青飛び』。とっても香りが良いですよ!」と試食をさせてくれたのですが、口に入れた瞬間磯の香りが広がる…! そう、海苔屋さんの海苔って香りも味もしっかりしていて、本当に美味しいんですよね。
「青混ぜも青飛びも、作ろうと思って作るわけじゃないんです。『青がわく』と言ってね、海が暖かいと自然につくものなんですよ」と山﨑さん。昔は青が入ると安価に取引されていたそうですが、最近では人気が上がり値段も上がっているのだそう。市船さんの今年のオススメ『青飛び』は、10枚560円。そのまま食べて香りを楽しむのもいいし、おにぎりに、ごはんのお供に、おつまみに、ちょっとお腹が減ったときのおやつにも…香り豊かな『青飛び』が活躍してくれること間違いなし☆
もう一つオススメが、焼きのりが2帖分入ったお徳用の半切り・三つ切り。市場時代からの人気商品だそうです。半切りは巻き寿司に、三つ切りはおにぎりにピッタリの大きさ! お求めやすいお値段も嬉しい♪ お支払いにはPaypayも使えますよ。
市船という家と海苔が大好き。だから、やれる限り続けていきたい
「兄が病気で商売ができなくなって、それからは父が一人でお店を続けていました。私は子育てをしながら市場の手伝いをしていたんですが、いつの間にか海苔屋になってましたね。父から『商売を続けてほしい』と言われているので、やれるだけやろうと思っています」
「やっぱりね、市船という家が好きなんです。小さいころから行商の人がいつも家に来ていてね、宿屋なんかあんまりなかったから、知らない人がうちに泊まっていくこともしょっちゅうで。一緒にごはんを食べたり歌ったり、とにかくいつも人がたくさんいて人を大切にする家でした。海苔も売っても売っても足りないくらい売れていて、富津からトラックにいっぱい積んで持ってきてもらって、それでもすぐ売れちゃうから足りなくて、トンボ帰りして今度は奥さんと2台で持ってきてもらったりしてね…。そういう時代もありましたね。父はとにかくよく働く人で、子どもながらに『すごい人だなぁ』と思っていました」
「でも今は時代が違うから、海苔も前のようには売れなくて。でも、やれる限りはやり続けたいですね。私自身、海苔が大好きだから」。山﨑さん、お茶請けに海苔をつまんでいると、いつの間にか一帖ペロッと食べてしまうんですって! 確かに、次々手が止まらなくなる感じはわかります…。
市船海苔店では自宅用・贈答用の海苔のほか、お茶やお豆などの乾物、同じ堀江の“美津屋のおかき”も販売しています。今年は山崎さんイチオシの『青飛び』を、ぜひ食べてみてください!
市船海苔店…浦安市堀江4-36-2 047-351-2733
月曜・第三火曜定休 9時~17時(土日は9時~16時)
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