浦安ってこんな街!
5.192015
マンションが朽果て、倒壊する条件とは~構造編
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マンションの寿命っていつなのか。そんな疑問を一度は考えたことがあるでしょうか。マンションの構造は主に鉄筋コンクリート(RC)造、鉄骨鉄筋コンクリート(SRC)造です。理論的には「壊れない建物」を造ることも可能なのですが、それには莫大な建築費がかかり、とても厚い壁になってしまうため、現実には安全性と経済性のバランスをみて計画されています。鉄筋とコンクリートは動物で言えば「骨や身」ということになるわけです。まずは材料それぞれの特性をみて行くことにしましょう。
コンクリートと鉄筋の基本的な性質・構造について
【コンクリート】は①セメント+②水+③砂と砂利が材料です。これらを設計通りに配分して混ぜます。コンクリートが固まる工程は「乾燥して固まる」というイメージをお持ちかもしれませんが、セメントと水が化学反応することにより(水和反応と言うそうです)固まっていきます。このコンクリートの特徴は、
●押される力(圧縮力)には大変強い
●引っ張られる力(引張力)には弱い(圧縮力の約1/10程度)
●ひび割れが起こる
【鉄筋】は、1900年代に製鉄業が盛んとなる中で生まれた材料であり、建築の歴史で見れば比較的新しい素材です。その鉄筋とコンクリートがお互いの弱点を補う材料として出会い、構造の主役になっていきます。この鉄筋の特徴は、
●粘り強く引っ張られる力に大変強い
●酸化反応により錆びる、腐食する
鉄筋の表面が凸凹しているのはコンクリートに絡みやすく、抜けにくい断面とするために凸凹しているのですが、鉄とコンクリートは構造材として相性が良いのです。
●温度による体積の変動(熱膨張係数)がほぼ同じであり温度変化によって分離しにくい
●アルカリ性のコンクリートは、鉄が錆びないように保護する役目がある
何だかお菓子を作るのと似ていると感じるのは私だけでしょうか・・生地を作って、中にフルーツを入れたり具材を入れて型に流し込んで・・焼いたりはしませんが。。
コンクリートが劣化するプロセス
鉄筋は腐食すると体積が増えます。その結果、コンクリートにひび割れを生じさせ、鉄筋の錆により体積が膨張→ひび割れが起こる→コンクリートがはがれる→加速的に腐食し崩壊が進むことになります。
コンクリートにひび割れが起きたら、ケガを直すために治療を施し、耐久性を損なわないようにします。「とにかく鉄筋を腐食させないぞ」と言うような維持管理が大切になります。しかし、敵はひび割れだけではないのです。
塩害と中性化の影響
化学の授業みたいになってきましたが、塩害とコンクリートの中性化は、いずれも内部の鉄筋に錆びを生じさせる現象です。表面上から見てもその浸食の程度が分からず、症状が現れた頃には、内部の鉄筋の錆は進行してしまっているというジワジワと体内を蝕む病気のようなものです。気付いたころには非常に大きなダメージを追ってしまっているのです。
【中性化】
コンクリート内部は高アルカリ性であり、この性質が鉄筋を錆びさせない関係となっています。空気中の二酸化炭素や亜硫酸ガスが雨水に溶け込み、コンクリートに浸透することによってコンクリート内部の水酸化カルシウム(アルカリ性を生む水酸基を持つ)と化学反応することにより炭酸カルシウム(水酸基を持たない)と水ができ、アルカリ性が失われていきます。その結果として鉄が溶けて(イオン化する)しまうということなんです。そしてさらにひび割れ部分から二酸化炭素と水が内部に浸入するため加速的に腐食が進む、という現象が中性化です。
【塩害】
ヒトの場合も塩分の取り過ぎは体に良くないわけですが、コンクリート内部に塩分が増えると鉄が酸化反応によって錆びて行きます。塩害による影響は、コンクリート内に存在するものによる影響と外から浸透する外的な要因に分けられます。
内的要因:1980年代前半まで、コンクリートに使用される砂に海砂が使われ除塩されてこなかったため、内部で鉄筋が錆びてしまう。
外的要因:鉄筋が腐食を始める塩化物イオン量はコンクリート1㎡あたり0.5~1.0kg/㎥ここに酸素や水分が同時に存在すると鉄筋の腐食が始まります。腐食が進行し、構造物としての耐久性に問題が生じる塩化物イオン濃度は1.5~2.5kg/㎥が目安です。
海風の影響を受ける建物は徐々に塩化物イオンが浸透して行くため、これらの対策を講じる必要があるということなんですね。
鉄筋コンクリート造の寿命~軍艦島へ調査に行きました
寿命がどのくらいなのか・・その答えを探す中で現存するRC造のマンションは築何年なのか調べて行くとその建物は無人島にありました。
世界遺産への登録勧告が話題の長崎市にある通称・軍艦島の建物群。その30号棟と呼ばれる建物が日本最古のRC造のマンションであり、築後99年経った今も現存しています。
産業構造の激動の変遷過程で1960年頃には約5300人が暮らし、東京の約9倍の人口密度となり、世界一人口密度の高い島と言われた軍艦島ですが、1974年に無人島になってから40年以上経過しています。建物付近に近付くことも危険な状態で、海風どころか波を直接受けるという過酷な条件下にあるため、部分的にコンクリートが壊れ、鉄筋がむき出しとなり錆びているところがあちこちに見受けられました。建物は使用可能な状態とは言えません。しかし想像以上に残っている、という印象でした。
鉄筋の錆びによるコンクートの剝れ
波の力で壊れている部分も
居住空間は潰れず残っています
錆びて膨張した鉄筋
元々は同じ太さの柱が徐々に細り消滅したところも
マンションの将来・・朽ち果てさせずに維持するには。
高度経済成長期の1960年代、バブル期の1990年代、そして現在。建材や施工方法、技術基準も変わってきています。一見劣化しているように見える古い構造物よりも、機械化されて造られた新しい同種の構造物の方が劣化の進行が早く、耐久性に劣る事があります。人間に例えると、江戸時代の40代(寿命が55歳)と今の60・70代を比べると健全な健康状態が比較できないことと似ているかもしれません。
近代のコンクリートが使われ始めたのがおよそ200年前。それ以前の鉄筋コンクリート造マンションは実在しないため(セメントに類似した材料は1万年近く前から用いられていましたが)生き物の生死のようにはっきりした線引きができす「鉄筋コンクリートの寿命」という線引きをすることは適切ではないかもしれません。ダムのような構造物であれば、本来の機能を失ったとしても1000年以上存在し続けることは想像できるかと思いますが、現在の建築設計基準には、設計耐用期間について「構造物に要求される供用期間の維持管理の方法、環境条件、経済性等を考慮して定めるものとする」とされています。適正な維持管理を行うことに限界をきたし、使用不能な状態を迎えた時が「建物の寿命」と言えるのかもしれません。実際、軍艦島は当時の最先端・生活レベルも非常に豊かで、”未来都市”とも言われました。しかし石炭から石油へエネルギー資源が劇的にシフトし、ある日を境に誰も住人がいなくなりました。そして手つかずに残った廃屋群が日本最古のマンションとして残った、という非常に珍しい”都市”だったんですね。
さて、私たちが暮らすマンションの適正な維持管理は、どのように判断していけばよいのでしょうか。次回、「マンションの寿命を延ばすポイント」についてお伝えしてまいります!ご興味持っていただけましたら、浦安に住みたい!webのフェイスブックページのいいね!を押していただければと思います。
【参考文献】
「コンクリートなんでも小事典」 井上晋ほか著 土木学会関西支部編
「コンクリート崩壊 危機にどう備えるか」 溝渕年明著 PHP新書
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