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【浦安発】生きづらさを抱える人たちが執筆した短編集『こもれび文庫』。暗い心にふと木漏れ日が差すような、優しい本が出来ました

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大なり小なり、誰もが抱えているであろう“生きづらさ”。多様な価値観が交錯するこの社会の中で、「コミュニティに馴染めない」「集団行動が苦手」「親や上司など、立場が上の者からのパワハラ」「人と違う自分に対するストレス」「誰にも言えない貧困」…様々な“生きづらさ”を抱えながら、日々を過ごしている人たちがたくさんいます。今回、そんな“生きづらさ”を抱える当事者の文章を集めた『こもれび文庫』が、浦安市内に本拠地を置く「社会福祉法人 千楽」より出版されました。千楽の副理事長・野澤和弘さんと、本の編集・執筆にあたったスタッフさんたちに、お話をお伺いしてきました。

学生たちが「自分と向き合い、自分を表現する」ことから始まった『こもれび文庫』

「千楽」は浦安市東野を拠点に、障がい者の就労支援・自立訓練など、障がい者福祉事業を主として展開している社会福祉法人。令和2年度から、発達障がいの方やその傾向のある方、ひきこもり状態にある方など、社会生活に困難を感じている方を対象に、東野パティオ内に地域活動支援センター事業を実施。障がいを含めた“生きづらさ”を抱える人たちへの、総合的な支援を行なっています。

東野パティオ

そんな「千楽」の副理事長を務める野澤さんは、毎日新聞の客員編集委員であり、植草学園大学の副学長も務めていらっしゃいます。日々授業で教鞭をとり学生たちと接する中で、一見何の不自由もなさそうな学生たちが抱える“生きづらさ”に着目。「平成21年に発表された内閣府の調査によると、『家や自室に閉じこもって外へ出ない人の気持ちがわかる』『自分も家や自室に閉じこもりたいと思うことがある』などの4項目全てに『はい』と答えた人=ひきこもり予備軍の割合は、約4%でした。同じ4項目を授業で学生たちに答えてもらったところ、実に約3割がひきこもり予備軍だった。今の若者たちがいかに生きづらさを抱えているのかが浮き彫りになりました」と野澤さん。

(イメージ写真)

野澤さんの授業では、文章表現や社会福祉の学びの一環で「自分と向き合い、みじめな自分を見つめ、それを表現する」という課題が課せられます。「最初はきれいごとを書いてくる学生が多いんです。でも少しずつ正直に、自分を見つめられるようになっていく。いじめに遭ったこと、いじめを傍観してしまったこと、家庭環境の不和、家族への不信感…一人ひとりの古傷から、読み応えのある文章がたくさん出てきました」。そうして集まった学生たちの文章を厳選し、昨年から『こもれび文庫』というnoteで掲載が始まります。現在は授業を取っている学生だけでなく、誰でも投稿が可能です。

重いテーマにも関わらず、読んでみると木漏れ日のような爽やかさと温かさ

今回書籍化したのは、『こもれび文庫』のnoteでリリースした中から14作品を選び、解説とまえがき・あとがきを加えたもの。「どこか懐かしく、ほっとするようなデザインにしてほしいと、細山田デザイン事務所にお願いしました。中身の印刷にはリソグラフという、版画のような仕上がりになる手法を使っているんです。製本は千楽で、職員が手作業で行ないました」。製本を手作業で!? デザインだけでなく、本の存在そのものから放たれる温かさは、そうした作業過程があるからこそなのでしょう。多少のズレも愛おしく感じます。

書籍版『こもれび文庫』。左側の茶色のカバーに、水色の本が収納されています。

書籍化した『こもれび文庫』を、実際に手に取って読ませていただきました。いじめや家族不和などの重たいテーマが多いにも関わらず、一つひとつのエピソードからは柑橘のようなみずみずしさが感じられます。目に浮かぶのは、当事者の言葉で紡がれた辛くも鮮やかな情景。読後は爽やかでほんのりと温かく、木漏れ日に包まれているよう…まさしく『こもれび文庫』という、タイトルそのもの。

(イメージ写真)

『こもれび文庫』執筆者の一人であり、千楽の職員でもある西巻さんは、野澤さんの大学の教え子です。「野澤さんの授業を受けて、大げさでなく人生が変わりました」と話します。「大学に行きながらも、就職するイメージが全然持てなかったんです。でも文章表現の授業に出会って、きちんと自分の古傷と向き合うことで、弱みが強みになるということを実感することができました。自分の文章が認められて、『こもれび文庫』に掲載されたことも大きかったです」

生きづらさを抱える人たちが、社会の中心へ

現在の『こもれび文庫』執筆者は学生・卒業生が中心ですが、「障がいを持つ方やLGBTの方など、今後は様々な“生きづらさ”を抱える人たちが当事者として発信していく文化を作っていきたい」と野澤さん。「様々な立場にある人が自分史を作れば、それ自体に文学的価値がある。20世紀前半に登場したプロレタリア文学は、近代資本主義で虐げられた労働者たちの厳しい現実を描きました。現代は、ソーシャルワーク(=福祉)文学の時代と言っても過言ではない。映画や小説でも、そういったテーマは増えてきています」

いい大学を出ていい会社に入って、お給料は年功序列で上がっていく。結婚して子供が生まれて、60歳で定年退職したら年金で悠々自適…。そんな日本のスタンダードが崩れている今、“生きづらさ”を抱える人たちをスタンダードへ合わせる福祉ではなく、“生きづらさ”を抱えた人たち自身が社会を耕し、生きやすい社会を作っていく必要がある、と野澤さんは話します。「生きづらさを抱えた人たちは、社会からは見えにくい。傍から見るとなんの問題もないように見えてしまうんです。誰にも言えない悩みや孤独を抱えた人たちに、みんなが同じように悩んでいること、そしてどこかで誰かが待っていてくれるということを、この『こもれび文庫』を通して届けたい」

『こもれび文庫』ご購入はオンラインで! 7月中旬に「居場所カフェ」もオープンします

『こもれび文庫』は、1冊1200円(本体1000円+送料。手渡しが可能な場合は1000円で販売します)。購入ご希望の方はこちらのフォームにご記入いただき、お振込みをいただいてから郵送いたします(振込手数料はご負担ください)。こもれび文庫を置いてくださる・販売してくださる店舗さんも募集中とのこと、もしご興味がありましたらメール(こもリズム研究会/comolism@gmail.com)にてご連絡ください!

左から、千楽の副理事長・野澤さん、執筆者の一人で千楽の職員・西巻さん、こもれび文庫の作成・プロモーションにあたる千楽の職員・吉岡さん。貴重なお話をありがとうございました!

また、地域の居場所づくりの一環として、千楽が運営する「居場所カフェ」が7月中旬に海楽へオープンする予定♪『こもれび文庫』も、居場所カフェにて販売するそうです。「もう福祉は一部の資格を持ったプロだけの手に負える段階ではない。街全体にソーシャルワークの機能を備える必要があります。多様な生きづらさを抱える人たちと一緒に、『まちづくり』『文化の創出』そして『人材育成』に取り組んでいきたい」。そんな千楽の目指す福祉の姿に、これからも注目です!

社会福祉法人 千楽…浦安市東野1-7-5 047-305-1988
法人概要 – NPO法人千楽chi-raku (chiraku.com)
こもれび文庫note『こもれび文庫』ご購入はこちらから

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