浦安ってこんな街!
12.232024
大切な人を救う力が、あなたにもある。「その10分が命をつなぐ」救命処置が変える未来。【命を守る研修会レポート】看護師集団「Nurse-Men」が浦安で一次救命処置を教えにきてくれた!
目の前で人が倒れた時、心肺停止状態から1分間で生存率が10%ずつ低下していく。日本の救急車到着平均時間は約10分。救急車が到着した時には、救急隊や病院の処置では手遅れとなり亡くなっている方が、1日で220人もいることをご存じですか。
あの10分間に何かできていたら…そんな後悔を抱える人を、そして大切な人を亡くし悲しむ人が一人でもいなくなるように。全国で一次救急処置の研修「命のバトンプロジェクト」を行う看護師集団「Nurse-Men」の方々が、東京学館浦安高等学校で研修会を開くとのことで、その様子を取材させていただきました。
「救う」ことは難しいかもしれないけれど、「救う行動」をするのは簡単。後悔しないために、10分間に自分が出来ること。
「We are Nurse-Men!」力強い掛け声とともに円陣を組んで始まった研修会。看護師というとまだまだ女性のイメージが強いですが、会場に現れたのは男性看護師のみなさん。その姿に少し驚きつつも、これから始まる内容に期待が高まります。
「目の前で人が倒れた経験って、あるかな?」そう問いかけたのは、Nurse-Men代表の秋吉崇博さん。
会場からは数名の手が挙がるものの、実際に救命行動を取れた人はほとんどいません。「行動に移すって、難しいよね。僕ら看護師は日常的に医療に携わっているからできることも、初めての場面ではとてもハードルが高い。でも、もし目の前で家族や大切な人が倒れたら…何か行動を起こさなきゃって咄嗟に思わないかな」
心臓突然死で亡くなる人の7割以上は、自宅で発作を起こしているという現実。すぐそばにいる人の行動の大切さを、秋吉さんは力強く訴えます。
「心肺停止状態から1分ごとに生存率は10%ずつ低下していきます。日本の救急車到着平均時間は約10分。その間に何もしなければ、救急車が到着した時にはすでに手遅れで、病院に運ばれてきても医師や看護師は何もできない…。僕は救命救急にいたので、そんな現場を何度も目の当たりにしてきました。でも、もしその間に心臓マッサージやAEDの処置がされていたら、その命は助かったかもしれない」
実際、救急車が到着するまでに心臓マッサージやAEDの処置をした場合、しなかった場合とでは、生存率が5倍も違うと言います。「家族や友達が目の前で倒れたら、助けられるのは自分だけかもしれない」。その言葉に、生徒たちの表情は次第に引き締まり、秋吉さんの話を真剣に聞き入っていました。
「『行動に移す』それが命のバトンとなり、病院で待つ看護師や医師へとつながるんです。難しそう、自分がやっていいのか、怖い…そんな気持ちがあるかもしれません。でも、今日この研修を受ければ、そうした不安を払拭できるはずです。ぜひ、命をつなぐ第一走者“バイスタンダー”になってください」
どこか他人事に感じていた「一次救急処置」。それがぐっと身近に感じられると同時に、その命を救えるのは自分だけかもしれない―。そんな意識の変化を得た生徒たちは、いよいよ実践へと進みます。
実践するから分かる力加減。この経験が“命のバトン”につながっていく。
「おい!先生が倒れたぞ!!」「え!え!!どうしよう?!」
突然始まった緊迫の演技。あたふたしながらも心臓マッサージとAED処置を行う姿をみると、やっぱりまだ「出来るかな…」と不安の残る表情の生徒のみなさん。一次救急処置の一連の流れを確認し、チームに分かれて心臓マッサージとAEDの方法を学びます。
まずは心臓マッサージから。手を組み、手の甲を使って胸の中央を押すのが基本です。心臓って身体の左側にあるイメージでしたが、真ん中なんですね。
次はいよいよ生徒のみなさんが実践。見よう見まねで始めてみるものの「力が足りない…」「腕が曲がっちゃう」と苦戦する生徒さんも多くいました。それでも数回繰り返すうちにコツをつかみ、徐々にリズミカルに処置ができるようになっていきます。
続いてAEDの練習に移ります。AEDは電源を入れるとアナウンスが流れるため、その指示に従って処置を進めます。「洋服を脱がせる」という行為に対する抵抗感から、どうしても男性が女性に対して処置をするのを躊躇してしまうのが現実だそうで、実際、女性は男性に比べて生存率が30%も違うんだそう。もし女性が倒れていたら同性の自分が処置できるように…より知ろうという気持ちが強くなりました。
AEDを使う際に一番注意が必要なのは、電気ショックを発動中は心臓マッサージの手を離すこと。触れていると感電してしまう危険があるため、周囲に人がいないか、自分が触れていないかをしっかり確認して処置を行います。
はじめは遠巻きに見ていた生徒さんたちも、どんどん前のめりになり積極的に実践に加わっていました。「思ったより長い間やるんだね」「結構疲れる…」という生徒さんに、「疲れてきたら他の人に交換してください。そうしないと一定のリズムと力で処置するのも難しいから」と秋吉さん。だから一人でも多くの人が出来ることが大切なんですね。
心臓突然死で亡くなる方をゼロに。一人ひとりの意識が変わることで“後悔”の無くなる世界へ。
「Nurse-Menの始まりは、男性看護師を世の中にもっと周知させたい。そんな想いからでした」研修会後、秋吉さんにお話を伺いました。救命救急の現場で看護師として16年のキャリアを持つ秋吉さんがNurse-Menを立ち上げたのは2020年のことでした。
「男性看護師の割合って10%にも満たないんですよ。まだまだ女性のイメージが強い職業なんです」最近は男性看護師をテーマにしたドラマや漫画を目にすることもあり、男性看護師が増えている印象がありましたが…意外でした。
「増えないんです。看護師資格を取る人は増えているのに、看護師として働く人の数は増えていない。資格を取っても、現場を離れる人が多いんです。この現状をどうにか変えたくて、会社を立ち上げました」
「女の子のなりたい職業ランキングでは看護師はずっとTOP10入りをしているのに、男の子は良くて40位程度…。同じ仕事をしているのに、どうしてこんなに違うんだろう。どうすれば男の子の憧れの職業になれるだろうって考えたとき、『ヒーローになるしかない!』と思いました」
男の子の憧れといえば“ヒーロー”。看護師の仕事が“かっこいい”に結びついてほしい、そんな思いから秋吉さんは医療の現場を飛び出し、外の世界へと活動の場を広げました。
「憧れって、やっぱり自分の体験が大きいと思うんです。でも病院は行かないに越したことがない場所。『見る機会』が少ないからこそ、僕たちが外に出て、もっとアピールしようと思ったんです」
今回の命のバトンプロジェクトも、そんな想いから始まったイベントでした。命を救う尊さと、その現場で尽力する姿を見ることで「看護師ってかっこいい!」と感じてくれる子どもたちも多いんだそう。研修後「看護師を目指してみたい」と声をかけてくれる男の子もいるそうです。
そんな「命のバトンプロジェクト」は、もう一つ、かけがえのない化学反応を起こします。
今回の学館浦安高校での研修、そのきっかけはNurse-Menの活動に参加したカレンさん。なんと学館浦安高校の卒業生でした。
「学生の頃、Nurse-Menの命のバトンプロジェクトの研修を受けて『これは同じ高校のみんなにも受けてほしい!』と思い、学校に働きかけました。一人でも多くの生徒に一次救急処置について知ってほしい。万が一のとき、自分も周りも後悔するのが嫌で…『後悔をしてほしくない』というのが一番大きいです」
高校での企画は1回に留まらず、今回で3回目。そして、カレンさん自身は2年前に卒業し、現在は看護学部で看護師を目指して勉強中です。Nurse-Menの命のバトン、確実に繋がれていますね。
「本当にそう。最近では『吉野家』さんが命のバトンプロジェクトに賛同してくださっていて、全国の吉野家を巡りながら定期的に講習会を開いています」。実際に、講習を受けた吉野家の社員さんが救命措置を行い、人命救助に成功したケースもあるんですって!すごいですね!!
「命のバトンプロジェクトを受けた方は6000人を超えていると思います。命のバトンは研修を受けた人だけじゃなくて、その人が誰かに話すことでどんどん広がっていくと思うんです。Nurse-Menの研修を受けたから『人を救えたよ!』という人を1人、10人と増やして行くことも、僕らの大きな目標です」
車の免許を取るときに、そういえば一次救急処置の講習を受けた気がする…と思い出した私。今まで忘れていたのは、どこか非現実的で他人事のように思っていたからかもしれません。Nurse-Menのみなさんの講習は、リアリティがあり自分のことに置き換えることが自然と出来ました。その現実感から「知らなければ」という気持ちを引き立てられました。自分事にする…伝え方の大切さも実感しました。
日本はAED普及率が世界でもトップクラスなのに、使える人がほとんどいないのが現実です。ぜひNurse-Menの命のバトンプロジェクトの研修を受けて、一人でも多くの方が命のバトンをつなげられるバイスタンダーになってほしいと思いました。受けてよかった!と、必ず意識が変わるはず。浦安から、世界から、「後悔」をする人が一人でもいなくなるように…一次救急処置について、学んでみませんか。
■Nurse-Menについて
一般社団法人「Nurse-Men」(ナースメン)
イベント会場での救護活動や健康サポート、災害時には地域を守る看護師チームとして迅速に対応。企業向けには応急処置や一時救命処置の講習を実施。
お問い合わせ:こちらから
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