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言葉にしなくてもわかる、伝わる、『私』のこと。巷で話題の【臨床美術】のワークショップを取材してきました!

「絵を描くのって苦手」――そんなあなたにこそ体験してほしいワークショップが、浦安で開催されています。その名も『U de 臨床美術部』。臨床美術はもともと認知症の症状改善を目的として始まったアートプログラムなのですが、今では子どもや社会人、子育て中のお母さんなど様々な方が対象になっているのだそうです。が…一体どんなことをするんだろう? 4/24(火)、市役所の市民活動センター会議室にて行われた『U de 臨床美術部』の様子を、取材してきました。

絵が苦手な方でも作品を作れる、独自の『アートプログラム』


机の真ん中には、この日の題材であるパンジーの花。4月のプログラムは『舞パンジー』、“自分だけの”パンジーを描こう!というワークショップです。講師を務めるのは、浦安在住・臨床美術士の伊東さん。「この中で絵を描くのが苦手だなっていう方は?」と問いかけると、なんと集まった5人全員が挙手! …絵を描くワークショップですが、苦手な方ばかりで大丈夫なのかしら?と、ギャラリーとしてはちょっと心配になります。

「では、作品作りの前に、少し手を動かして準備体操しましょう」。続いて、紙とオイルパステルが配られます。このオイルパステル、良く見てみると…わざと3つに折られている?

「その意味は、クロッキー(絵を描く上での準備運動)をしていくとわかりますよ。ではまず、好きな色を一つ選んでみてください。それで、紙にこうして線を引きましょう」。
 
伊東さんの話に合わせて、早く引いた線、ゆっくり引いた線、オイルパステルを寝かせて描いた線、力を入れずに描いた線…とどんどん紙が埋まっていきます。「線と線にまたがっていいので、蛇行した線を引いてみてください。そして出来た図形、どこでも良いので塗りつぶしてみて。同じところを、別の色を重ねて塗ってみてください」。…みんな同じように線を引いて色を塗っただけなのに、それぞれ個性が出ています!
 

「紙と画材を渡されて、いきなり『絵を描いてください』って言われると、得意な方は出来るかもしれないけど、戸惑ってしまう方も多いと思います。自由にやるってなかなか難しいんです。一つずつプロセスを踏むことで、少しずつ感覚を開放していく。脳を活性化させていくことができます」と、『U de 臨床美術部』代表の多田さん。「絵を描く」と言ってもどこから始めていいかわからず取り掛かれなかったり、他人の目が気になったり、思ったとおりに描けないもどかしさがあったり…そういう余計なことを全部取っ払えるのが『臨床美術』なんですね。

いよいよ『舞パンジー』を描きます!

本番の制作も、一段階ずつ進めていきます。まずはパンジーを触って、匂いを嗅いで…視覚だけでなく、五感を使ってパンジーを捉えます。

「なんだか花が顔に見えますよね。パンジーの名前の由来ですが、この首をかしげたような様子から、“思考”を意味するフランス語『パンセ』にちなんで名付けられたと言われているんですよ」。

一番迷ってしまいそうな輪郭線は、用意してくださっている写真をトレース。トレーシングペーパーを使って、丁寧に作業順を追ってくださるので安心です。
 

続いて色決め。使いたいな~と思う3色をまず選ぶのですが、ここでだいぶ個性が分かれた感じがしました。

そしていよいよ、彩色していきます。「中から外へ向かっていくと、塗りやすいですよ。基本的にはやっちゃいけないことはないので、自由に塗っていってくださいね」。少しのざわめきの後、静かになった会議室。オイルパステルが紙に当たるトントンという音だけが響いています。参加者全員が、自分の作品に集中して向き合っている瞬間…

「この瞬間、どのワークショップでも必ず訪れるんです。いわゆる『マインドフルネス』の考えとも近いのですけれど、今この瞬間に起こっていることに注意を向けている、全員がそういう状態になっている。こうなると私たち講師はそっと、皆さんの集中を妨げないように気を向けていきます」。
 
あえて下地の色を残して着色する人、色鉛筆で細かい線の表現に挑戦する人、色の上からさらに薄い色を重ねてみる人、色と色の境界を指でぼかしてグラデーションにする人…気がつくと、みんな「絵が苦手」とおっしゃっていたはずのなのに、思い思いの表現に没頭しているから不思議です。

塗りが完成したら、ベビーパウダーを使ってオイルパステルを定着させます。

続いてパンジーの輪郭線を切り抜きます。さらに色つきのトレーシングペーパーを使って輪郭を切り取り、画用紙の上にパンジーとトレーシングペーパーを構成していきます。
 
これで完成です!

全く同じステップを踏んだはずなのに、これだけ違う“個性”が出てくる!


こちらが今回参加された皆様の作品です。同じ題材、同じ写真、同じオイルパステルを使ったはずですが…こんなに違う作品に仕上がるんですね!

一人ひとりの作品を、参加者の皆さんと講師とで鑑賞しながら、思いや感想を共有していきます。


「このズレ! こういう偶然のズレも、アートですよね」「柔らかさの中に、尖った部分も感じる作品」「丸みのある、イキイキしたパンジー」…。どの作品にも、言葉にしなくても“その人らしさ”が表れているように感じる…この場にいた講師の方々も参加者の皆さんも、そう思ったに違いありません。『みんな違って、みんないい』という言葉の真髄を、ここに見たような気がします。

ワークショップ終了後、『U de 臨床美術部』代表の多田さんにお話を伺いました。「父が脳卒中で倒れて以降、意欲をなくしてしまって…。脳を活性化するのに良い方法はないか探しているうちに、この『臨床美術』に出会ったんです」と多田さん。ご自身はデザインの仕事をされていて、美術に関する見識はあったもののそれは非常に“左脳的”だった、と言います。「臨床美術はすごく“右脳的”。理屈ではないんですね。今回はパンジーのプログラムでしたけど、『舞パンジー』を描くプロセスを通して、『気づいていない自分らしさ』を皆さん感じてくださったんじゃないかと思います」。

左が代表の多田さん、右が講師を務めた伊東さん。もう一人、広報担当の横山さんを含めて、現在3名で『U de 臨床美術部』活動中です。

「今の世の中って、『答えのない世界をどう生きていくか』が問われている。子育て・教育・介護・天災…それに対する正解はなくて、白黒はっきりできるものでもありません。そういう世界を生きていくために、理屈や言葉ではない表現である『臨床美術』が力になれるんじゃないか、と思っています」。昨年10月に発足した『U de 臨床美術部』。今年に入ってから徐々にワークショップの参加者が増え、連続して出席してくださる方も出てきたと言います。「連続して受けていただけると、より『臨床美術』の効果を感じていただけると思いますよ」と、講師を務めた伊東さん。

臨床美術のアートプログラムはもっと幅広く、絵画だけでなく彫刻や造形のプログラムもあるのだそう。次回5月22日(火)には、『糸と色で遊ぼう』が開催されます。作品をちょっと見せていただきましたが…えっ、これタコ糸とシールでこんなに面白くなるんですか!? と驚いてしまいました。

『U de 臨床美術部』のワークショップは、浦安市役所内・市民活動センターにて定期開催しています。定員6名、残念ながら次回5月22日はもう満席だそうです…。ただ、キャンセルも時々出るとのことなので、ご興味のある方は諦めずにご連絡をしてみてください! お電話でも受付してくださいます。  U de 臨床美術部のホームページはこちら

「自分を表現する!」のではなく、「気づいたら自分が表現できていた!」…というほうがしっくり来る『臨床美術』。認知症予防に興味のある方はもちろん、絵が苦手な方や、自分に迷っている方、なんとなく日々モヤモヤしている方、子育て中のお母さんにも、ぜひ体験してほしいプログラムです。ワークショップは毎月開催されていますので、ぜひ参加をご検討されてみてはいかがでしょう?

U de 臨床美術部…https://coubic.com/ude
※『臨床美術』及び『臨床美術士』は、日本における(株)芸術造形研究所の登録商標です。

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