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マンションが朽果て、倒壊する条件~維持管理編

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浦安に住みたい7・8月号でご紹介しております築99年のRC造マンションの現状。長崎市の軍艦島はこれから多くの方が訪れることと思います。

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前回の構造編では建物を構成する材料の性質と具体的事例として軍艦島の状態についてみてきました。その中で、マンションの寿命を左右するひとつのポイントが「人の手で維持管理されていくこと」ではないかと思います。今回はマンションの寿命を延ばす3つのポイントを見ていきます。

①いつどこを修繕するか

建物の維持管理は計画的に行うことが大切です。いつどこをメンテナンスするのか、マンションではその計画を「長期修繕計画」と言います。その計画には概ね12・24・30年周期で修繕を行う項目が列挙されています。建物の特性によって周期は異なりますが、「長期修繕計画作成ガイドライン」(国土交通省)によると、例えば、コンクリート部分の補修は12年、屋上の防水は24年(補修は12年)、給排水管などは30年周期とされており、この周期で修繕していくことが望ましいという目安とされています。

■計画的に修繕するための資金計画

計画的な修繕を行っていくためには工事に必要な資金も計画的に準備していかなくてはなりません。長期修繕計画にはその資金計画についても盛り込む必要があります。国土交通省の「マンションの修繕積立金に関するガイドライン」によると、15階未満の建物では、178~218円/㎡・月、20階以上の建物では、206円/㎡・月程度とされています。つまり70㎡で12,460~14,420円/月、90㎡ですと16,020~18,540円/月になるというわけです。

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前述の長期修繕計画に基づく修繕のうち、足場等をかけて行う外壁や屋根等の防水等、複数の工種を一括して行う工事を「大規模修繕工事」と言います。国土交通省の指針によると概ね12年周期が望ましいとされています。その一般的な費用は、都市圏の一般的なファミリータイプで一戸当たり60~150万円程度の範囲に8割の事例が当てはまるようです。12年周期とすると最低でも月額4,200~10,500円程度は積立てないといけない計算です。

■予期せぬ修繕が発生することも

このほかにも、災害などによる修繕やライフスタイルの変化による将来的な改修などに備えて資金を準備することも重要です。
・不測の事故その他の特別な事由により必要となる修繕
・敷地及び共用部分等の変更
・建物の建替えに係る合意形成に必要となる事項の調査
・その他敷地及び共用部分等の管理に関し、区分所有者全体の利益のために特別に必要となる管理

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■修繕積立金と管理費の違い

既にご存じのことと思いますが、「修繕積立金」と「管理費」は使途が異なります。

管理費の使途としては、①管理人人件費②公租公課③共用設備の保守維持費及び運転費④備品費、通信費その他の事務費⑤共用部分等に係る火災保険料その他の損害保険料⑥経常的な補修費⑦清掃費、消毒費及びごみ処理費⑧委託業務費⑨専門的知識を有する者の活用に要する費用⑩地域コミュニティにも配慮した居住者のコミュニティ形成に要する費用⑪管理組合の運営に要する費用⑫その他敷地及び共用部分の通常の管理に要する費用
などが挙げられます。これらの費用はマンション管理を運営していく上で必要な経費です。修繕積立金から計上してしまうと、修繕の資金計画に影響を及ぼすことになってしまいますので会計を区分します。

②定期的に検診し、必要があれば補修。

■建物の健康診断をしよう

人間の場合、病気やけがになってしまったときは、病院で診察を受け、処置が必要な時は治療をするわけですが、建物の維持管理も定期的な審査と治療が大事です。突発的な病気が見つかる場合には早めの処置を行うことで建物への影響を避けることができます。

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診断結果を踏まえて、長期修繕計画にそった修繕工事を行うことで効率的な工事が可能になります。大規模修繕工事は住んでいる住人にとっては、負担もかかりますが、これにより①外壁の補修、床面の防水を行う「機能・性能の維持」②外壁や鉄部の汚れを落とし塗装を施すことでの「美観の維持」③改良改善等を行う事での「資産価値の向上」をしていきます。

■診断の結果、想定外の出費がかかる場合

さて、長期修繕計画の大規模修繕の予定年度に積立金が足りない時はどうしようもないのかというとそんなことはありません。
・月額の修繕積立金を増額する
・予定年度に修繕積立一時金を徴収する
・予定年度に金融機関から借入れを行う
・計画修繕の内容や時期を見直し、支出の圧縮を図る
などが考えられますが、こうならないように計画的に資金計画を練っておかなければなりません。

■修繕記録を残す

建物の維持修繕の記録を残しておくことが建物の価値を示す上で大切になってきます。客観的にみることのできる修繕の記録は住まいの履歴書とも言われ、目で見える形でしっかり残しましょう。

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③人がかかわっていくこと

建物を維持管理する上で、修繕計画の作成、資金積立、修繕工事についてみてきましたが、これらを実施する住民・管理会社や専門家との関わりが重要です。最も古いRC造マンションが残る軍艦島のように、ある日を境に住民が居なくなってしまうという事例は稀だとしても、利用する人が少なくなり、空家や貸し出す方が増えると住環境を管理する意識が低下してしまいます。そうなると建物の劣化が進み、住まいへの愛着も薄れてしまうなど、自分のものを大切に維持していくぞ、という意識が薄れてしまうと徐々にだとしても建物の寿命が縮んでいくことに繋がるのではないでしょうか。

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マンションが朽果て、倒壊してしまうことが建物の寿命と言うことではなく、そこに人の暮らしが快適に続くことがマンションの寿命に関係し、長く使うことができるように維持管理に積極的にかかわる事が結果としマンションの寿命を延ばすということになるのではないかと思います。

建物の寿命を知るために軍艦島を題材としてきたわけですが、明治日本の産業遺産の一部に指定されたことでこれから寿命を延ばしていくための方法が求められます。私たちが暮らすマンションもこれから年数を重ねるわけですが、軍艦島の建物保存が、マンションの長寿命化につながるような維持管理のヒントとなるかもしれません。

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参考文献
そこが知りたいマンション大規模修繕Q&A 岡廣樹監修・著 鹿島出版
マンション管理の実務 週刊住宅新聞社
マンション管理の知識 住宅新報社

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